飲食店長のブログ ~ 人材戦略の実践レポート

実際に飲食店を経営しながら、そのノウハウを突き詰める

オーナーと店長の物語

エピソード:

人手不足を訴える飲食店があった。店長はオーナーに「募集しても応募者が来ないんです」「そもそも人手不足の産業なんです」と訴える。だから募集時給を上げてほしいと要求してくるつもりなんだろうと、オーナーは予測した。オーナーは過去の経験から、スタッフを充足させる手段は「雇う事」と「辞めさせない事」の2本柱であることを知っていた。しかも「雇う事」すなわち募集活動はやってみなければわからないギャンブル的な要素が多く店舗努力が影響する範囲は小さい、、だからほとんどの店舗努力は「辞めさせない」活動に使われる、とも思っていた。さらに辞める気のない従業員は、自ら募集媒体となって友人を連れて来てくれるような事も起こるのだ。

 

店長はオーナーがそこまで理解している事も知らず、「人手がたりない!なんとかしてほしい」と言い続ける。さては 店舗の状況が悪くなってきたことを応募数不足のせいにしようとしているな、とオーナーは考える。応募数不足が原因ならば「不可抗力」的な見方をしてもらえるとでも思っているのだろうか。自分が何人のアルバイトを退職させたか、とか、従業員にもっと喜んで働いてもらうためにの労働条件の改善などには着手していない事は棚に上げて、「仕方なかったんだ」「現場は大変なんだ」「営業崩壊なんだ」(俺のせいじゃないんだ)と論理形成させようとしているのかとも思う。

 

近隣の店舗はもっと大きな売上げがあるのに職場崩壊せずに営業している事を、オーナーが指摘すると、さらに大きな声で感情的に「現場はたいへんなんだ」「社会が悪いんだ」「オーナーはわかってない」(おれのせいじゃないんだ)とわめく始末。

 

オーナーは質問の方向性を変えて、では、今、何人在籍していて何人たりないのか、その根拠の説明を求めても、即答できない。店長は毎日の営業が大変なのは感じていたが、その改善策を冷静に検討したことはなかった。すでに幽霊アルバイトがたくさん在籍しているので、正確な稼働数、稼働率はつかめてなかったのである。

 

オーナーは募集時給を上げる必要がある事はわかっていたが、そうしなかった。なぜならこの店長にそんな権限を与えても、無駄に経費を増やすだけなことは明白だからだ。チームメンバーが足りなくなってきたら、採用と退職予防の両方で成果を出さないといけないが、その第1歩は現場全体の正確な把握である。総従業員人数がよくわからないような店長に解決できるはずはない。たかだか、アルバイトの不満を大きな声で伝えるくらいの事しかできないのである。

店舗でおこっていることはすべて店長の責任である。それを責任逃れしようとしているような人間にリーダーが務まるはずはない。すでに従業員からも見放されている事は間違いないだろう。彼は権限をもっていたが実行しなかったのである。彼はすでに「店長」ではない。

 

オーナーはまず店長を交代させることを優先した。そこから改善が始まるのである。