飲食店長のブログ ~ 人材戦略の実践レポート

実際に飲食店を経営しながら、そのノウハウを突き詰める

最悪なコンテスト

エピソード

 

このオーナーはい複数の飲食店を経営している。気になるのは各店の売上げ状況だ。前年対比で伸びていってくれれば問題ないが、大幅ダウンは困る。各店舗の周辺の状況も考えて、目標売上げは明確にしており各店店長も頑張っていると思う。

ある日、中堅店長のAとスーパーバイザーがオーナーのもとにやってきて各店対抗の売上げ、利益コンテストを導入しましょう、と熱心に発案してきた。彼ら曰くプロモーションしている商品の出数の多さやフードコスト、レーバーコストのPLAN%に対する削減率を競おうというものである。オーナーはいつも売上げと利益を気にしていたが、長期的な視点では現場の店長が正しいプロセスで努力してくれていることが大切と考えていた。しかも、A店長は凄く熱心にすすめてくれたし、画期的な案にも見えた。「店長からの発案」というのも「聞こえ」が良くて、友人に自慢できるかなと、コンテストを了承した。コンテストの結果で店長の給料が上がるようにもした。

 

こういう目標設定の考え方は「KPI=Key Performance Indicator)」と言うらしい。再重要プロセスの目標数値を定めて、努力させることによって業績を伸ばすことができるらしい。

 

「KPI」コンテストが始まったら、A店長の成績が抜群に良く。彼が優勝しそうだ。オーナーは頑張りを称賛しようと思い、彼のお店を訪問することにした。ただ、なぜか彼の店舗の売上げは芳しくなかったのは心配だた。KPIが優良ならば長期的に成果につながる通過点なのだと理解しようとしていた。

 

A店長の店舗の状況は悲惨なものだった。プロモーション商品を売るために他のメニューをお客様から隠している、レーバーコストを下げるために必要数の人がいない、、、フードコストを下げるために商品の量が少ない、、、、、。オーナーはこのコンテストは失敗すると感じて、新しいルールを追加した。スーパーバイザーが緊急に巡回し、本来の目的を逸脱した行為を取り締まる事にした。各店長からは「逸脱した行為」って何?と言う質問が出たが、スーパーバイザーは即答できなかった。そもそもA店長は自分の店舗の売上げ伸び率が不振だったので、KPIを利用したコンテストを提案したのだった。オーナーはその目論見に引っ掛かり、やらなくてもいいコンテストを実行し、全社のサービスレベルを破壊した。その上腹心のスーパーバイザーと店長の信頼関係もダメにした。

 

1人の男のよこしまな虚栄心に、周囲の人間が巻き込まれた。このコンテストは本来の目的の達成のために役に立たないどころか、障害になるようなモノになってしまった。


偏った分析を声高に主張したり、間違った分析指標を出すと、当然成果はでなくなる。それが悪意をもったデータ隠や煽りだった場合、悲惨な結果になる。 

 

上司や会社による間違った目標の押し付けは「目標が無い」ことよりも罪が重い。本来店舗や店舗社員の目標を、最終目標である売上げを達成できるようにマネジメントするのは店長の仕事だろう。

このオーナーは店長の領域まで踏み込んだ目標を掲げてしまった。それによって正しいプロセスで仕事が組み立てられない店長が生き延び、正しく自立できている店長を迷わせることになった。この会社は優秀な社員の流出に悩まされることになるだろう