ホール女子のSさんは2回生で明るい人です。彼女とお店をやっているときに、4人づれで40台くらいの男性客から玉子スープがオーダーされました。当店の玉子スープは大きいサイズなので、シェアされる方が多いのです。Sさんがサーブするときに、小さなお椀をひとつつけて私は「お椀があといくつ必要か聞いてください」と言いました。 Sさんはお客様とお話したあと、「お椀はいりませんでした」といって帰ってきました。
その3分後くらいに、私がそのテーブルの近くを歩いたら、その4人客から「お椀ください」と言われました。玉子スープをシェアするためです。
私はお椀を渡して、厨房に戻りSさんに「君は反省しないといけないね。あのテーブルのお客さんがお椀をほしがっていたよ」と言いました。
するとSさんは「私、言いました!」との反応。
私は「だから問題なんだ。キミが言ったのに真意は伝わっていない。言い忘れてたほうがマシやで」と言ってしまいました。「身も蓋もない」とはこのことで、Sさんは言葉を失い、沈没。
まあ、こんな事はしょっちゅうあるので、しばらくそっとしておいて、あとから「言いすぎたたなあ」とか言っておけばすぐ元に戻りますので心配いりません。
心配なのは若いSさんの言葉が40台の男性に通じなかった、響かなかったということです。Sさんがお椀の事についてお話しているのは私も見ました。でも、近くにいる私にさえ、彼女の言葉は聞こえてこなかった。つまり4人ではなく玉子スープを注文した人にだけ聞こえるくらいの声しかでていなかったように思います。普段は元気で大声なんですがね。
だから、声のトーンとか、誰を見て話すか、とか、わかりやすい言葉を使っているか、身振り手振りを使っているか、を考えると、今回用件が伝わらなかった理由も見えてきました。
若い人の中で「コミ力」(コミュニケーション力)が高いとか低いとかを話題にしている事が多いです。多分、就活指導でいわれるのでしょう。たしかにコミュニケーション力の高い人はいます。積極的で話題豊富であることがコミュニケーション力であるかのような見方をされています。
しかしその実態は「声が大きい」とか「ゆっくりしゃべっている」とか「相手の目をみている」とか「身振り手振り」などの話題以前のファクターがコミュニケーション力の基盤なんだという事に気が付いてほしいですね。
身も蓋もない言い方も、たまには良いです。