飲食店長のブログ ~ 人材戦略の実践レポート

実際に飲食店を経営しながら、そのノウハウを突き詰める

「他人を手伝うな」という理論

「他人を手伝う」事は 基本的には良い行動です。但し、飲食店のホールにおいては「他人を手伝うな」というタイミングがあります。

ある日、少し遅い時間に結構忙しくなってほぼ、満席になりました。ホール係は2人です。ホールのAさんが新しいお客さんのオーダーを受けて、焼肉のたれとかの用意をし始めました。

 

もう一人のホールのBさんはどう動くべきか?

この場合、Bさんが最もやってはいけない事は「Aさんを手伝う事」です。

 

AさんとBさんが2人で同じことをすれば、ホールはがら空きになってしまいます。お客様の呼び出しに対応できません。

 

でも、満席でオーダーもなく膠着状態になっている場合、一時的に、Bさんに仕事が無い時があります。でも客席にいるお客様は多いのですから、いつオーダーが入るかわかりません。焼肉屋は追加オーダーが多いのです。お客様が何かをこぼしたり、いろんな要望が発生する事も多い。

 

ですから、Bさんは既存のお客様の接客に集中し、Aさんは新しいお客様に対応するフォーメーションにしてほしいのです。

 

サッカーでも、ラグビーでも、上手なチームは攻撃と守備にポジションを分けたフォーメーションを確立しています。フォーメーションもなく全員でボールを追いかけているようなサッカーチームは弱いし、ゲームも面白くありません。指揮系統も機能しません。

 

暇な時は何をしてくれてもかまいませんが、忙しくて張りつめている時に、こんなふうにフォーメーションを破壊する人がいます。

 

このフォーメーション的な理論を何度言い聞かせても、できない人が当店に3人います。決してアホではなく、新人でもなく、性格も良い人です。性格が良すぎるのかもしれません。

 

他人が動いているのに、自分がじっとしている事に耐えられないんでしょう。

 

気持ちはわかりますが、チームとしては迷惑です。この人のポジションだけぽっかり穴が空くのですから。

 

こういう人は、一つの仕事を2人でしたがります。キツイ言い方ですが「お手伝い」が大好きなのです。

 

残念ながら、何度説明しても行動が変わらない人は、ピーク時間帯になると、「判断力が必要なポジション」から外して、自分勝手に動かないようにしています。

 

理解したように見えて、行動させるとできない人って絶対にいるのです。

 

心ぐるしいですが、きちんと言い聞かせている姿を他の人に見せないと、フォーメーション全体が崩れてしまいます。いつまでも私に小言を言わせる人とは、こんな人です。

 

これを見過ごしていては店長は務まりません。

 

びっくりするのは、こういうことが言わなくてもわかってる人もいる事です。こういう人がマネージャー候補ですね。人選を誤れば、全てが崩壊します。

 

 

 

飲食店のNET評価にモノ申します

箕面市役所の近くに「モンキーヒル」という喫茶店(洋食屋)があります。

創業52年ということです。

小さい頃から知っていますが、この前ランチをいただきに利用いたしました。

喫煙可能な客席で何の変哲もないランチを食べ、アイスコーヒーを飲みました。

 

ホール係は「おばさん」とか「おっちゃん」「にいちゃん」でした。親族経営に見えます。結構広いお店ですがチェーン店感はありません。

 

天井の埋め込みエアコンは壊れてしまって、別に付けたものを使っているようでした。

52年前といえば昭和40年代、バブルどころか、オイルショック前ではないでしょうか。

お店の外観も昔ながらの感じですごく良い。

 

私は中学時代、自転車でこのお店の前を通ったら、何のお店かわからなくてドキドキしました。高校生になると飲食店なのだろうと思いましたが敷居が高くて「いつか利用したいなあ」と思ってワクワクした事を思い出しました。

 

大学生以降はこんな感じのお店が多くなって、たくさんあるお店の一つと認識。特に171号線の箕面近辺や新御堂沿いに若者が集うお店は多かったのですが、今はモンキーヒルしか残っていません。(サンタモニカってのもあったなあ)

 

で、最初にお伝えしたいことは、ここが当日「超満席」だったことです。席を待っている人もいました。

 

今もちゃんと繁盛店なのです。すばらしい。

 

www.kissa-nostalgia.net

 

Google等のNETで、このお店のコメントをいくつか見ました。

 

批判的な物もあります。禁煙席が無いとか、味がどうだとか・・・・

5点満点の1点を付けている人もいました。

 

 

私は言いたい「ええから黙っとけ!!」

 

 

52年前からあるお店になんだから、今のあなたの「ものさし」で判断すな。

 

モンキーヒルは飲食店がNETで評価される前からここにあって、今も、お客様に愛されているのだ。

 

この店に最低評価を付ける奴は、考え直してくれ。

 

もちろん、私が今、暴言を放っているのは理解しています。

 

しかし52年の歴史があって、今も繁盛しているお店に入ったなら、そのお店をまずリスペクトしてほしい。このお店が禁煙席を作らないのは当然だと判断してほしい。

 

チェーン店でもなく、京都の老舗料亭とかではない。

何の変哲もないランチを出す、何の変哲もない大衆洋食喫茶が52年経っても繁盛しているのだ。

モンキーヒルは歴史や伝統を主張することもなく、そこにある。

 

 

もう一度書く、

 

52年前からあるお店で、今も変わらず繁盛しているお店になんだから、まずリスペクトすべきだ。なぜ52年も続いているのか、そこが理解できていない奴はこの店を語ってはいけない。

 

コ〇ナの影響分析やってみました

当店アルバイトは大学生だけでやっています。

 

ですから数字を統計してみると面白い事になります。

 

今年の1年生は育っているのか?

2~4年生は今後どう扱えばよいのか?

を判断するために数字を出してみました。(数字だけでの判断は嫌いですが、感覚を数値化するために)

 

8月の各学年の給料総額のシェアは

4年生  7%

3年生 43%

2年生 17%

1年生 33%

 

5月の各学年の給与総額のシェア

4年生 14%

3年生 37%

2年生 18%

1年生 24%

 

8月は帰省がありましたが、各学年別のシェアは変化しません。

ただし4年生が そろそろ、「学生最後の夏を満喫し始める」というのか、、、働かなくなりました。

 

その代わりに1年生が仕事になれてきてシェアを増やしてきます。

 

現在、当店は2年生のシェアが少ない点が特徴であり欠点とも言えます。

原因はコ〇ナでの時短要請でしょう。現2年生が1年生の時が一番時短要請が激しかったのです。

ですから採用人数が伸びなかったし、育成もすすみませんでした。世間体のせいか地元学生が応募してこなかった事も特徴です。頑張って採用活動はしたのですが、今ぐらいしかスタッフを集めることができなかったという事です。

 

ですから、今年の1年生を多めに採用することには意義がありました。地元学生の採用数が多いので、お盆の時期も休まず営業できました。

 

っていうか、この8月において1年生の成長が無ければ危なかった。

 

4年生がこんなに帰省や旅行にでかけるとは思わなかった。

これもコ〇ナで帰省・旅行が制限されていた反動でしょう。

オンライン授業で単位が取りやすくなった事もあって、もう大学にこなくても卒業できる単位数になっていたりしています。だったら帰省期間を長くしよう、と思う事も理解できる。

 

数字だけが正しい、とかではなく、数字を見て皮膚感覚と整合してみるって作業は必要だし、有効ですな。いろんなことが見えてきました。

 

ここ3年のコ〇ナにより影響が、売り上げやスタッフィングにどんな影響をもたらしているのか、そろそろ分析したり、答え合わせしてみてはいかがでしょうか

 

人不足だとか、社会現象だとか言ってないで、自分のお店で何が起こっていたのかを分析してみる時期だとおもいます。

 

 

 

これはイノベーションなのか?

 

 

イノベーション」という言葉が使われる事があります。

革新または技術革新という意味のようです。

今までになかった新しい仕組みを取り入れる事で大きな影響をもたらす事です。

 

先日も書きましたが、回転すしのお店に「特急ライン」を付けることは確かに技術革新です。

 

では、特急ラインがあるから、1日中お寿司を廻さないのはイノベーションでしょうか?

また、特急ラインが設置されていないお店でタッチパネルオーダーだけにして1日中お寿司を廻さないのはイノベーションでしょうか?

 

rocketnews24.com

 

先日ネットに、あるファーストフードのモバイルオーダーに関する記事が出ていました。客席に座ったままオーダーできるモバイルオーダーがあればカウンターに並ばなくてすむし、「順番をごぼう抜き」できるので素晴らしいシステムだと書いています。

 

本当に、そうなのでしょうか。モバイルオーダーはイノベーションなのでしょうか?

 

ごぼう抜き」されている人達も大切なお客様なのではないでしょうか。列に並ぶ時間が長いのは店舗(企業)の責任ではないのでしょうか。

 

そもそも、客席に座ったままでオーダーし,従業員さんが持ってきて来てくれるのは、普通のレストランでやっているサービスです。創業時に「セルフサービス」という概念を打ち出したファーストフードが50年以上経って「普通のサービス」になったというだけの事に見えます。

 

回転すしを廻さなくなって、全部オーダーされてから握るんだったら、これまた「普通のすし屋」です。

 

自分たちは、どういう経緯でいままでの成長を成し遂げてきたのかを軽んじ、

抜本的な改革をしたように謳いながら、実は発想が「後退」しているだけなんじゃないかな。

 

誤解の無いように言いますが、私は回転すしもファーストフードも大好きです。今でもよく利用します。

 

ですから敢えて言いますが、顧客は絶対に見透かしていますよ

 

だからモバイルオーダーが主流にならないのです。お客様がカウンターで買いたい理由はたくさんあるのです。

 

それを知らない評論家に、カウンターで買う人は「馬鹿者」であるかのような記事を書かれています。

 

店長さんは怒らないのですか?

 

偽りのイノベーションや顧客への不公平な取り扱いは滑稽でさえあります。

 

私は、いろんな業種が売上げや利益を求めてチャレンジしていくことは良い事だと思います。しかし同じようなアクションでも、その商売にフィットするものとそうでないものがある。その基本的な判断基準は 

 

「自分たちが何者なのか」

「お客様から何を期待されているのか」

「そのアクションは人道的に正しいのか」とかだと思います。

 

正しい変革をイノベーションと呼んでほしい。

 

そうでない変化は 「後退」か「失策」でしょう。

 

偽物です

 

 

必死な人はすばらしい

アルバイトのMさんは大学1年生ですが、高校時代から飲食店のアルバイト経験もありましたので、ある程度、客商売を理解しています。

 

身長はかなり大きくて、話し方もやや豪快です。怖がったり、おどおどしたりはしません。

 

ともすると、言葉使いや雰囲気で「荒っぽい」んじゃないかなと心配していました。

 

しかし、彼女の新人時の事。

 

お客様として来店していた友人からの評価は「今日は必死な人がひとりいたなあ」でした。

 

そうです。

 

私たちが「荒っぽいかな」と心配していたMさんは、お客様から「必死な人」に見えていたようです。

 

そういう目で見てみると、だれよりも早くお客様のもとへ走る、注文を聞き逃さないように真剣に聞き、記入する。その時はニコニコと軽やかではありませんが、真剣さとパワフルさは伝わっていたようです。

 

とにかく、真面目で真剣な事が一番良い。

 

センスがあっても、かわいくても、「真面目さと真剣さ」にはかなわないのだな、と思いました。

 

 

そんなMさんもそろそろ半年在籍しています。真面目さや真剣さは変わりませんが、少しリラックスして同僚と楽しそうに語ったりしている姿はとても可愛らしい。

もともとの荒っぽさは 積極性とリーダーシップに昇華して、同学年のリーダー的な存在になってきました。

もともと身長が高いので、見栄えがすごくて、モデルさんみたいな感じに見えます。

 

今年は長身女子大生が多くて、一緒に働くメンバーの身長差を考えながら配置しないといけなくなってきました。

 

身長の低い人には低い人なりのかわいらしさがあるのですが、凸凹は良くないな、と思います。

 

めんどうですが、嬉しい悲鳴です。

 

なんでも、心配ばっかりせずに、良い方に展開していくことを期待しているほうがいいですね。

 

次世代のエースが誕生しました。

 

次世代のエース

 

 

「神泡超達人」の称号の使い方を考える

 

 

 

8月初旬にサントリーさんから「神泡超達人」の認定をいただきました。おいしい生ビールを出す希少なお店であることの証明です。(宝塚市でわすか2店舗!)

 

 

近隣のいくつかの居酒屋さんが生ビールを安く売る戦術を使っているので、それに対抗するために「どこよりも美味しいビールを出す店」であることを打ち出したのです。

 

宝塚という商圏の特性から考えて、「生ビールが安い」というアピールに対して「美味いという保証付きの生ビール」というアピールで戦えると踏んでいました。

 

結果としてはまあまあ成功していると思います。お客様からは「『神泡』ちょうだい」と言われるケースもありますし、お客様がおかわりしてくれることも多いです。

他のお店のやり方も勉強しようと思って、休日のたびに「神泡超達人店」に食べに行きました。でも多くのお店は告知ポスターすら貼っておらず、不安になりました。

 

ところで、

「神泡」という称号ですから、美味しい泡を楽しんでいただきたいのですが、お客様の中には 泡の少ないビールが飲みたい人もいます。「泡=損」の感覚です。

 

それは誤解です。

 

ビールをグラスに注いだとき自然に出てきてしまうのは「あぶく」で、「あぶく」はおいしくないし、時間が経つと無くなって、見た目のビールの量は減ります。瓶ビールではこういう現象になります。

 

しかし、生ビールサーバーから抽出されるクリーミーな「泡」は「あぶく」と違って、おいしいし、時間が経てば、ほぼ同量のビールの液体に変わります。つまり、時間が経っても見た目のビールの量は変化せず、泡とビールの比率が変わるだけです。

 

神泡超達人店ではジョッキの3割くらいを「泡」の状態にします。この「泡」が美味しいのです。つまり「泡」を楽しめる状態にしています。これが「神泡」です。

 

瓶ビールでは実現不可能ですし、泡を多くしてお店が儲かるわけでもありません。

 

 

でも、お客様が瓶ビールを飲んでる感覚で「泡が多くて損やなあ」と感じてしまったら商売は失敗です。ですからしっかりした告知が必要なのです。

 

おおくの達人店は、そういう葛藤の中で泡の量を減らし、告知をやめていくのではないでしょうか。もったいないことです。

 

 

でも、ドイツビールとかを樽生で売っているお店とかにいけば、泡がしっかり入っているビールを出してくれるし、その入れ方を見ると、あぶくを捨てて 「泡」だけをしっかりいれています。

 

本格的な生ビールとはそういうものなんです。

 

積極的な告知を止めずに、そういうおいしさを追求するお店なのだ、という事を印象すけるための戦法として「神泡」をこれからも主張していきます。

 

たぶん成功すると思います。

 

「ビールはどこで飲んでも一緒」ではないのです。

 

 

 

 

 

採用と育成はリンクしているのです

ある人とお話をしていて、こんな事を言われました。

 

概要としては

「おタクのお店のホール係さんで、イヤな思いをすることは全くないですね。他のお店では、『なんやこいつ!』って思う事もあるのに・・・。うまく育てておられますね」

こんな感じの内容だったと思います。

 

まことにありがたいお褒めの言葉です。しかし、私は考え込むことになりました。

 

私のお店では、どんな”人材育成”をしているのだろうか?マニュアルは作らないことにしていますし、ギチギチにトレーニングしているわけでもありません。ベテランでもありません。いまだにお酒の事がわからない人も多い。

 

で、私が達した結論は

「ノーマルな人を採用して、ノーマルに育成しているだけ」だということです。

 

伝票の書き方とか、ドリンクの作り方とかは教えますが、全部は覚えこまないまま働いています。わからなければその都度確認しながらやっています。

 

「こういう接客をしなさい」、とか「こういう用語を使いなさい」といった指導はしていません。

 

なぜなら、ちゃんとした大学生さんを採用しているつもりですから、お客様にはどう接するかは知っていると思うからです。

 

でも、接客している姿を見て、飲食店として気が付くべきことを気付いていなかったら「網を変えてきてくれ」「スープを補充してくれ」「おかわりを聞いてきてくれ」とか具体的な指示はだします。1回はその作業(仕事)を経験させるためです。一度経験した仕事は「スキル」となりますのでその後、時に応じて発揮してくれます。

 

行動を見て、具体的な指導をする事は大事です。

それに反して、マニュアルを読ませてその通りにやらせることは危険です。

 

「お客様が御来店されたら元気にあいさつしましょう」から始まるマニュアルを作る事は不必要だと思います。そんなことは誰でも知っているし、知らない人は雇ってはいけない。

 

また基本的な言葉使い等のマニュアルを作ることによって、新人に「いつもの自分を出してはいけないのだ」と思わせるなら、これは大きなダメージになります。

 

キャラクターが良いから採用しているのです。

 

ですからそのままサービスしてもらうべきなのですが、「マニュアルを完備する」ために、基本的なキャラクターを殺してしまうのです。

 

結果として、おかしな感じの言葉使いや動きが実行されてしまいます。普段は良い子なのに、アルバイトで接客するときは おかしくなっている人も多い。

 

日本人は同じ言語で、同じ感覚で生活しているのです。

 

言わなくてもわかる事をあえて言うことによって「誤解」を生んでいる事に気が付かなくてはならない。気持ち悪い、不愉快なサービスが横行する原因の一つはこれです。

 

教えないとわからない事を教え、言わなくてもわかる事はそのままにしておく。

 

そう考えると、「教えないといけない事」はそんなに多くないです。

 

採用と育成はこういうふうにリンクしているのです。