「飲食チェーン店の店長」といっても、今と昔で大きく変化しています。
40年~50年前に世の中に飲食チェーンが出現したときは、
チェーン店といえば
マニュアルがしっかりしている、
人材育成のシステムを持っている、
出店コストが安くなったり、
大規模化できたり、メリットだらけでした。
店舗と本部の連絡は電話か書面か担当員の訪問指導ぐらいでした。
はっきり言って週に1回コンタクトできれば良い方です。
マニュアルはありましたが、
運営の大部分は店長の判断によるものでした。
それでも当時の個人事業者が自己流で営業するよりは「手厚いサポート」だったわけです。
ですから、優秀な店長が「チェーン本部のサポート」を生かして、サービスを向上させ売上を上げていきました。
しかし、チェーン本部のシステムはお店を完全に管理できるほどの能力は無かったのです。なにしろファックスさえなかったのですから。
店長は本部からの通達や管理を信頼はしていましたが、
全幅に頼れるほどのコミュニケーションはとれませんでした。
店舗の売上げをを高めるためには、自己のリーダーシップと判断の質が大切だと知っていました。
なので、優秀な店長を集める事が出来なかった企業は競争に負け、いつのまにか市場から除外されてしまいました。
そんな中、1990年くらいから、インターネットや電子メールのシステムが出現する事によって、本部からのサポートの量が飛躍的に増しました。現場の店長は「サポート」が増えた事を喜び、さらに成果を出しました。
しかし、電子メールによる「サポート」はすぐに「指示」に変わりました。
インターネットにより本部が店舗の運営状態を細かく管理できるようになりました。
チェーンの店長にとって本部からの指示のほうが店長の自己判断よりも大切になりました。
便利になった反面、
現場の店長の判断能力や育成力・責任感はすぐに劣化しました。
売上を高めるためにどうしたらよいか?
ではなく本部の作戦や要請にこたえる事が大切になったのです。
インターネットを使った店舗管理システムの発達はさらに進み、全世界を網羅するようなものもできています。
したがって店長の判断能力や育成力の劣化は激しく進みました。
「じゃあ、もう店長なんか不要だよね」と考える経営者も増えていますし、実際に店長という概念を解消してしまったチェーンもあります。アルバイトだけで営業できるシステムを考えた人が評価される時代もありました。
店長という概念が事実上なくなってしまって、
一番不具合が出るのは「人材育成」です。
社会はこれを「慢性的な人手不足」と言い替えています。
育成するマニュアルやシステムはおびただしく開発されていますが、使いこなしている店舗なんかありません。
これを、「現場力の低下」と呼んでいます。
現在、いろんな飲食チェーンで食事をしますが、「ああこの人が店長さんだな」と思う人に出会ったことはほとんどありません。フロアーにおける店長(店長代理)の存在感なんか微塵もない。
会議室で決まった事をアルバイトさんが実践する事がチェーン店のやり方になりました。
お会計や注文取りなど、間違えたら困る事はタッチパネルやセルフレジなど無人化されたシステムに置き換えられました。
店舗のサービスがほぼ無人化されれば店長は必要ありません。そもそも店長は「人間のリーダー」ですから。
では、そんなお店は「売上げをどうやって伸ばすのか?」
これは、各社の戦略、価格設定、宣伝能力 だけに頼る事になりました。
いまや本社の権限はさらに絶大なモノにあっています。
いまのところチェーン店のビジネス戦略は上手くいっていると思います。
かつて、チェーン店の店長が本部のサポートを受けながら、近隣の競合店と顧客獲得競争に知恵を絞っていた時代はすでに終わっています。
ですから 多くのチェーン店には店長は必要ないのです。
かといって、全ての飲食店で店長が不要なのではありません。
小規模のチェーンや 個人事業の飲食店には「店長」が必要ですし、店長の能力によって営業状態や売上げが大きく左右されます。
これからは 店長(人)が運営するお店と システムが運営するお店の戦いになるようです。
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