飲食店長のブログ ~ 人材戦略の実践レポート

実際に飲食店を経営しながら、そのノウハウを突き詰める

飲食店営業は慢性的過重労働なのか ⑥完

【飲食業が過重労働になりやすいわけ 】

プロフェッショナル店長とは

店舗の責任者として人を束ね、施設と売上げを管理し、業績を高めていくための理論をもって運営している人です。「経営者」とは少し違います。オーナーシップをもった実務者とでもいいましょうか・・。

 

店長がプロの領域に達していなければ、お店は徐々に劣化します。

 

オーナーさんで自動的に店長になっている人の多くは、何も研修しなかったり、簡単な研修だけで「店長」をやっているんじゃないでしょうか。

 

どんな人でも最初は、チカラ不足のまま店長になります。それは仕方ありません。

 

しかし、その後、体系的な育成が無ければ、チカラ不足はそのままです。

お店に店長は1人しかいないから四六時中観察してトレーニングしてくれる人なんかいないのです。ここがおおきなポイントであり、落とし穴です。

 

手本や理論が無く、トレーナーもいなければ、何年現場にいても、”本当の本物”にはなれません。店長とはそういう立場です。

 

しかも、店長の具体的な仕事は 売上げ対策、金銭管理、施設管理、人材管理、人材育成の全てにおいて長期計画にもとづいてバランスを取って投資し、ビジネスサイクルを廻すことなのだから、複雑なんです。

 

バイトと同じではないのです。

 

当然、誰でも最初はうまくいかないのでバランスを崩します。

そのとき、真っ先に状態が悪くなるのが人材関係です。設備が急に壊れだしたり、売上げやお金は急になくなったりしませんが、人材は急にいなくなります。従業員は退職するからです。

 

人材の状態が崩れ出したら、すでにサービスは悪化しています。

 

そして、知らない間にお客様は減っています。失望したお客様はもどってきません。これがいわゆる「レベルダウン」で放置すると「終わり」になる。

 

プロフェッショナルな店長は、従業員が「人不足」を感じるようになったら、すでにお客様は失望していて、ビジネスは取返しの着かない事態になりつつある事を知っています。

ですから、常に従業員をモチベーションし、福利厚生策を実行し、離職率を悪化させないために何重にも対策するのです。事態が悪くなる前に臨時休業したり、早じまいしたりするのも「お客様に失望を売らない」ための手段です。

退職予防のためのリテンション活動ではなく、商売成功のためのリテンション活動なのです。それは根幹中の根幹活動です。

 

ですから人材(スタッフィング)は全てにおいて最優先です。

 

味が普通でも売れるお店はあります。味が極上でも短期で閉店するお店もあります。人が本当にいなくなったら、もう営業できません。

 

飲食店は身近な存在なので、腕に自信のある板前さんや料理人さんが独立して規模の小さなお店を作ったり、脱サラの勢いで開店したりする業界でもあります。

 

でも、料理のプロが 店長としてもプロである保証はありません。

 

したがって、プロフェッショナルではない店長がたくさんいます。ビジネスプロセスと人材(スタッフィング)との密接な関係や優先順位がわかってないまま店長になったとしても、その後、その人はなんとかしてプロフェッショナルにならなければならない。

 

「いやー、いつも人不足でねえ」とか「このへんはアルバイトがどの店もいないんよ」とか言うてる店長はダメです。プロフェッショナルな人はこんなこと絶対に言いません。その発言の重大さがわかってるから。

 

マチュアな店長は、簡単に人不足になったり、人不足になりかけているのに具体的な策を打てず、運営をどんどん悪化させます。

「過重労働」なんて言われかけたら店舗に将来はありません。

 

現状、開店してもすぐに倒産・閉店する飲食店が多いということは、やはり飲食店は慢性的に過重労働を引き起こしやすい業態だともいえます。

 

ただし、原因は環境ではなく、リーダーの質と能力です。

 

「飲食店を開くのは簡単だが、プロフェッショナルな店長になるのは難しい」ということを世間が理解していれば、労働環境はもっと良くなると思います。

 

私は飲食店長のブログを通じて、「飲食店を成功させるプロフェッショナルな店長像」を飲食店の店長さん、お客様、すべての人の伝えたいと思います。

 

自分で店長をやりながら、プロフェッショナルな店長を語るなんて なんて傲慢でうぬぼれた奴なんだ、と思われるかもしれません。でも、私も歳をとって、もうあと何年できるかわかりませんし、おっさんのわがままと思って許してください。

 

                    完

追伸

私は 常に店長の権限がなく能力が伸長されないため、総合的運営レベルが上がらない事を心配しています。

だから現場に権限を下ろす事を提案いたしております。

しかし、多くの飲食店では、タッチパネルや配膳ロボット等サービスの機械化やAI導入を加速化し、あたかも「店長の能力に関係なくお店を安定させる運営方法」を手にいれようとしているように見えます。

 

特に昨今の機械化は計算や集計の手間を省いてオンザフロアーの時間を増やすという目的ではなく、オンザフロアーのサービスそのものを機械に置き換えるという試みです。店長を配属しない会社も出てきました。

 

本当の店長の仕事とは、きわめて総合的です。

いわばオーナーシップをもって、チームをまとめ、金銭・設備・技術を管理し顧客を増大させていく事です。

その全てをAIや機械にゆだねるなんて、本当にできるのでしょうか。

中途半端に権限を奪ったり、与えたりしていてはかえって仕事を複雑化し、問題が増えてしまうのではないかとも思えます。

だからといって、人間という気まぐれな生き物は生産性が安定せず、現状のまま放置していても成長するとはかぎらない。

 

今後の動向に注目しましょう。