アルバイトさん(従業員さん)はみんな頑張り屋さんなんですよ。
とくに新人のうちに、「頑張り」を認めてあげる事が大切なんですが、少し慣れてくると「頑張り」の方向性を修正する必要が出てきます。
カンタンに言うと「店長のため」とか「先輩や仲間のため」ではなく「お客様のため」に頑張ってもらうようになってほしいんです。
ある日、私は大学1年生でアルバイト4か月目くらいの Sさんに、
お鍋のシメに雑炊をすることになったお客様のテーブルを綺麗にするために「できるだけいらない食器を引いてきてください」と言いました。Sさんは雑炊のオペレーションを1人ではできませんので、私が雑炊をするつもりでした。
すると、Sさんはそれなりに食器を引き上げてきてくれたのですが、お客様のテーブルは散らかっていて、「今から〆の雑炊を楽しもうか」という雰囲気ではない。
しかしSさんは、雑炊の準備を始めようとしました。私のためにです。
私は彼女を制止して、もう一度指示を出しました。
「雑炊を気持ちよく食べれるテーブルにしてきて!!」
(ちょっと怒気を含んでいたと思います)
新人のうちは、より具体的な指示を必要としますが、慣れてくると指示を抽象的に表現して、目的を伝える方が良いのかもしれません。実力がついているのですから、どんな風に仕上げるかを共有するための指示になるわけです。
彼女は、もうそういう時期になっているのですが、私の具体的な指示に対して忠実に動いて、さらに先回りして次の仕事をしようとしたわけです。
慣れてくると、余裕がでてくるのですが、その余裕がお客様ではなく「上司」に向いてきている。
いうなれば「店長に気を使っている」状況。
これは「危機」です。早期に「お客様に気を遣う」人になってもらう必要があります。
でも、「鉄は熱いうちに打て」ですから、ちょっと叱ったあと、きちんと説明しました。
「あなたは顧客第一ではない」と伝えるのはとても勇気がいるし、ナーバスな事ですが、数分ですがキチンと向き合ってちゃんと伝えました。
今回はいうなれば、私の指示のミスです。「雑炊するからテーブルを綺麗にしておいてください」で良かったんです。ですから私も悪いのです。そういう意味では気の毒ですが、飲食店は「ライト ナウ ビジネス」ですから、お客様に対して不完全ならば、即時改善させるために強い口調が必要なときもあります。
強い口調で指示してしまったので、その後しっかりフォローしておくのです。
彼女には、「君は成長している。だからこれからは 『お客様のテーブルをきれいにしてきてください』と言うことにする」と伝えました。
具体的指示から抽象的指示への進化です。
それが、「アレやっといて」になって
言われる前にやってくれる人になっていくのです。
彼女はその過程が目に見えるような人です。今回は叱りましたが、たぶん叱るのは今回が最後でしょう。