4月中旬に採用したSさんをゴールデンウイークに働いてもらう事にしました。できる仕事はほとんどありませんので、OJT「On the Job Training」のために働いてもらう事になります。
■資料
OJTとは、「On the Job Training」の略称で、新人や未経験者に対して、実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法です。
ゴールデンウイークに新人を入れ込むのは、チャレンジングな事です。お店が混乱したり、全然育成が進まなかったりする可能性があるからです。
やってみると育成を成功させながら、店舗運営レベルを守るためのポイントを学ぶことができました。ポイントは
・「トレーナー」の能力
・売上の見極め
・何をしてはいけないかの設定
・実施中の徹底性
でした。
まず、一番面倒見の良いMさんをトレーナーとし、売上げが高すぎない時間帯を選びました。
お客様が入って来る5時~6時頃をターゲットとしてOJTを進めました。その時間帯は仕事が単純だからです。7時以降は帰るお客様と入って来るお客様が交錯して、仕事が複雑になるためトレーナーの能力キャパを越えてしまいます。ですからSさんには7時で帰ってもらいました。
そしてMさんとSさんは常に一緒に動く事を約束してもらいました。トレーナーのMさんはSさんに何を指示してもいいけど、2人が離れて別々の仕事をしてはいけない事にしました。「ひとりぼっちにしてはいけない」のです。
思いもよらなかったのは、OJT実施中に他のアルバイトさんから「Sさんにコップ洗いさせたい」という要望が出た事です。トレーナーのMさんがSさんの面倒を見ているあいだ普段の生産性が発揮できていなかったので、他人から見たらもったいなくみえたのでしょう。
たしかに新人のSさんを生産性の低い単純労働に回して、Mさんに100%の能力を出してもらいたい、という発想は正解です。
但し、問題は、Sさんはコップ洗いをした事がないので、誰かが時間を使って教えないといけないのだ、という事です。
提案者はそこまで理解できていないか、「そんなんチャチャと教えたらだれでもできる」と思っているのでしょう。
”コップ洗い”という仕事をマスターしてもらうには時間が必要です。
洗い方だけでなく、洗ったコップをどこにしまうのか、その場所を説明しないといけないのです、当店はコップだけでも10種類ぐらいありますので、だれかが時間をとって彼女をトレーニングしないといけませんので、「彼女にコップ洗いをさせる」という発案はもう手遅れなのです。
ですから、私はこの提案をその時は却下しました。
OJTが行われている時、店長はトレーナーだけでなく、その他のメンバーにも、OJTの意味を理解させ、徹底していかないと効果が出ない事を学びました。
他のメンバーの動き方も少しづつ変わってくるのです。彼女ら全員に負担がかかることもわすれてはいけない。
つまり、フロアーの責任者の判断や行動によって、育成は成功するか失敗するかが最終的に決定する、とも言えます。
これが大きなポイントですね。
ちなみに翌日、トレーニーのSさんは3時間コップ洗いだけを行いました。成長は見られます。