飲食店長のブログ ~ 人材戦略の実践レポート

実際に飲食店を経営しながら、そのノウハウを突き詰める

厨房男子の育成のツボ

実は、ほんとうに大事で貴重なのは、厨房のアルバイターではないか、と思います。ホールの人のチカラを生かすも殺すも、厨房の速さ、正確さが影響してきます。厨房のバイトさんが殆どのメニューをマスターしていてくれたら、私がホールに出て、ホール女子のフォローをすることができます。

メニューの説明や、ホルモンの焼き方などをホール女子といっしょにお客さんに披露したりすると、お店のグレードは爆上りします。お客様とお店のココロの距離感も一気に近くなるでしょう。

これらの素晴らしい体験を支えるのが、厨房男子の能力アップです。

女子とちがって、厨房男子のポジションは調理する人と、それをサポートしながら洗い物をする人の2つしかありません。しかも後者のポジションは忙しくならなければ存在しません。厨房が私1人の時間帯もあるのですから。したがって厨房男子の育成はホール女子の育成よりもデリケートですし、膨大なトレーニング時間を使います。

大学1年生を採用するのすが、ほぼ全員、家事や炊事の経験もなく、包丁を握ったこともない人です。例えば、知識もないので「テフロン加工」した鍋を金たわしでこすったりして台無しにすることなど、気を付けていないといけない。包丁の握り方なんかしらないので、指を切らないように、きちんと教えます。

そういう段階から、洗い物⇒私が切ったものを並べる⇒簡単な仕込みを包丁を使って実施⇒自分で肉を切って商品にする⇒おつまみやサラダを作る⇒コースを任せるという感じに慎重に丁寧に育てていきます。ごく、たまに「アホーッ」っていう事もありますが、なぜか普段、丁寧に真剣に教えているので、まわりが心配するほど、しこりは無いようです。

厨房男子の中でS君は3回生くらいからほぼオールマイティになりました。S君が入っている時は、私とS君でテーブルを分けて担当します。S君が1番と3番テーブル、私が2番と4番テーブルというふうに手分けするんです。S君はほぼ私と同じ仕事をするからです。とするとお客様には適切な理想のスピードでお肉が次々運ばれてきます。混んでて忙しくても、遅延する事もありません。私も余裕ができるので、ちょこっと厨房から出てお客様に挨拶したりできます。

 

S君がいないときは全てのテーブルを私が担当し、簡単な仕事を厨房男子に任せるだけなので、どうしても遅くなりますし、私のメンタルも荒れます。

 

ですから、厨房男子は面接の段階から、真剣に対話して、スケジュールに余裕があるか、私との相性はどうか、など非常にたくさん吟味します。採用率は面接5人に1人くらいではないでしょうか。

下世話な話ですが、閉店間際になって厨房が1人の時間になったら、私が厨房を出て客席に座ったり、用事をしたりして時間を過ごします。そんな時間に仕込み作業をしたら効率が良いのですが、絶対にしません。閉店が近くなるとヒマで仕事もへるので厨房男子とホール女子が会話をしはじめるからです。楽しそうに学校の事とか・・。ですから、おっさんは退散するのです。

もしかすると彼ら、彼女らが一番楽しそうな表情をするのはこの時なのかもしれません。わがお店の退職率を下げているのは、「この時間」と「まかない」 なんだと思います。